クリア・ブルー・スカイ
『クリア・ブルー・スカイ 〜いまそこにある命〜』
自分の存在が、今まで親に望まれてあったものだと信じ、疑ってはいなかった。
まったく、これっぽっちも。
当然と思っていた生きる権利は、実は自分のものではなかったと知った時、今まで信じていたものが端からガラガラと音を立てて崩れだした。呆然と、俺をそれを止めることも出来ずただ嘘だと、これは夢だ、と、突きつけられた真実を信じようともせずに、耳を塞ぎ目を閉じその場にしゃがみ込んだ。逃げ出した。
逃げた先には、何もなかった。
嫌った自分から眼を逸らしていたら、逸らした先にはそれ以上に嫌悪する自分がいる。辛い現実に正面から向き合えるようになったのは、アッシュを通して見る事の出来た先に、まだ自分を捨てないで信じてくれた存在があったからだ。
「どうかしたのか、ルーク」
街の中を歩いて移動している時だった。ルークは最後尾でふと脚を止め、小鳥の囀る晴れ渡った空を見上げる。
前を歩くガイが止まった足音に気付いて、振り返って問うた。
ルークは仰いだ視線をそのままで、口を開いた。
「あの鳥も、『生きて』るんだよな…。みんな、………俺も」
自分に言い聞かせるようにルークは言って、澄んだ綺麗な青を仰いだまますっと瞼を閉じる。間の裏に浮かぶ、アッシュの不機嫌そうな顔。彼も、生きている。自分だって、まだ。
生きて、いる。
「ルーク、…お前が取り戻した青空だ」
「うん。俺が…」
命に変えて取り戻した。
瞼を開いて一杯に広がる空は深く青く何処までも続いて、果てし無い。その青さが眼に沁みて、青がぼやけた。
ルークはガイに視線を向ける。涙が零れた。それでも、ルークは自分が涙を流しているのに気付いていないかのように、ゆっくりと微笑む。
「ガイ、生きるって、いいよな。生きている事って」
「………ああ」
優しく辛そうに笑って頷くので、ルークはガイは本当に優しい奴だなと、泣いて笑った。
「そうだ。生きているから、笑うことだって出来る。だから、生きなきゃな、ルーク」
手を伸ばして、ガイはルークの涙を人差し指の背で拭った。
「行こう。みんなが待ってる」
言われて気付く。
ガイの向こうに、心配気に止まって二人を窺うみんなの姿があった。どうかしたのかと、戻ってきて訊ねるのとは違う彼等の優しさが、今ではよく分かる。分からない自分は、本当に酷く幼く愚かだった。
「そうだな、早くローレライを解放させなくちゃな」
言って、ルークはガイを置いてみんなの元に駆ける。ルークの駆ける背を、遣る瀬無い気分で見つめるガイは直ぐにルークに名を呼ばれて後を追った。
青い、空の下。